家の食料備蓄が続かないのは、手間も置き場所も家庭だけで抱えているから。北海道・十勝の松橋農場は、あなたの家族の1年分の小麦と大豆を畑で育てて預かり、何もなければ翌年、麺や味噌にして食卓へ届けます。その仕組みと費用を、やさしく紹介します。
備蓄が続かないのは、手間が多いから
棚の奥から出てきた缶詰の期限が、去年で切れていた。水の箱が玄関の場所をとっている。子どもが大きくなって、わが家に必要な量がもうわからない。
そんな経験は、きっとめずらしくありません。
ふだん食べるものを少し多めに買い、食べた分だけ買い足していく「ローリングストック」は、よくできた方法です。ただ、在庫を数えて、期限を見て、買い足す。これを何年も続けるのは、仕事や子育ての合間にはなかなかの手間です。置き場所も限られています。
続かないのは、気持ちが足りないからではありません。家庭だけで引き受けるには、やることが多いのです。
「育てて、預かる」ところから農家に任せる
北海道・十勝の更別村で、1930年から四代つづく松橋農場は、この手間を農家が引き受ける仕組みをつくりました。「農家の備蓄プロジェクト」です。
買い置きを棚に積むのではなく、あなたの家族のぶんの小麦と大豆を、農家が畑で育てるところから始めます。
仕組みは4つのステップ
- 会員になる:1人の1年分を目安にした量(小麦30kgと大豆9kg)の生産と備蓄を、種まきの前に農家へ任せます。
- 育てる:小麦と大豆は肥料も農薬も使わずに育てます。種は100%国産です。
- 預かる:収穫のあと、低温庫で品質を保ちながら1年間保管します。
- 食卓へ還る:何も起きなければ、翌年、麺や味噌などの加工品になって自宅に届きます。
何も起きなかった年は、麺や味噌になって届く
届く加工品は約2万円相当。家庭の備蓄として約3か月分が目安です。食べながら備える、という意味では、これもローリングストックです。数えるのも買い足すのも、農家の側でやっています。
夕食のうどんをすすりながら、「これ、うちのぶんの小麦なんだって」と子どもに話す。備えが、食卓の会話になります。
もしものときは、会員に優先して全量を
地震や台風、長い停電、物流が止まったときなど、備蓄を引き出せる条件は会員規約に書かれています。そのとき農場は外への新しい販売を止め、会員への供給を最優先にします。預けた分は、全量を引き取れます。
家の棚で備えるのと、どこが違う?
置き場所がいらない
1人あたり小麦30kgと大豆9kg。家族4人なら、その4倍です。家に置こうとすると大仕事ですが、農場の低温庫なら場所の心配がありません。
期限の管理がいらない
毎年新しく育て、前の年のぶんは加工品にして届ける。入れ替えは仕組みの中に入っています。「気づいたら切れていた」が起きません。
だれが、どう育てたかがわかる
育てるのは、顔と名前のわかる農家です。畑のようすは、農場のInstagramでも見られます。
家に置く備えをやめる、という話ではありません。水やすぐ食べられるものは、これまでどおり手の届く場所に。そのうえで、いちばん場所と手間がかかる主食の備えを、農家に預ける。そんな分担の考え方です。
費用と、申し込む前に知っておきたいこと
個人向けの「豆・麦プラン」は、年50,000円(税抜)。1日あたりにすると137円です。1口が1人の1年分で、家族の人数ぶん申し込めます。初回だけ入会金10,000円がかかり、農場の井戸づくり、つまり会員みんなの水の確保に使われます。
お米まで備える「米豆麦プラン」(年70,000円・税抜)は、いまは満員です。次の受付は、優先案内に登録した方から順にお知らせが届きます。
申し込む前に、知っておいてほしいことが4つあります。
- 支払いは銀行振込。一括なら4月末まで。4月末に半額、11月末に残りの2回払いも選べます。種まき前に準備を整えるための決まりです。
- 申し込みから8日以内なら、全額が戻ります。それ以降は種まきと生産が始まるため、年度の途中でやめて返金を受けることは原則できません。
- 契約は1年ごとの自動更新。翌年は続けない場合、その年の12月末までに申し出ます。翌年の畑の計画を決めるためです。
- 天候で収穫が減った年は、全国の連携農家からの代わりの供給か、翌年の精算で調整します。
もうひとつ。松橋農場はこの仕組みを「保険のような、食べものの備え」と呼んでいますが、これはたとえです。会員規約にも、保険商品や投資商品ではないと書かれています。農家と食べる人が協力して備える、会員の仕組みです。
備えることが、農家を支えることになる
会員が種まきの前に1年分を任せてくれるから、農家は安心して育てつづけられます。備える人が、つくる人を支える。つくる人が、備える人を守る。お互いさまの仕組みです。
代表の松橋泰尋さんは、5人の子どもの父です。受け継いだ農場を、堂々と子どもたちに渡したい。その思いが、この仕組みの出発点にあります。
わが家の備えが、十勝の畑を次の世代へつなぐ力にもなる。備蓄を「がんばって続けるもの」から「任せて、食べて、つづくもの」へ。そんな選び方も、あります。